【書評】メニューの読み方 うんちく・フランス料理(見田盛夫)【92冊目】

概要

フランス料理のメニューを読めるようになるにはどのようにトレーニングすればいいか。

フランス料理でコースを頼むとつまらない。寿司屋でおまかせを頼むようなものだ。そのとき食べたいものを、アラカルトで一品ずつ頼みたい。そうでなくては、牛肉やスズキや鯛ばかり食べさせられてしまう。

著者は会社員でありながら、フランスで一流レストランを食べ歩くことを夢見、独学でフランス語のメニューの読み方をマスターした。いい意味の変人だ。その方法論を、惜しげもなく公開してくれる。

しかも、この本を持ち歩けば、フランスを闊歩して好きに料理を頼めるようにと考えてくれている。

  • 単語集
  • ソース類単語集
  • a la で始まるメニュー語集

といった膨大な付録が巻末についているのだ。

本文については、著者が食べた思い出に残る料理とともに、実際のメニューの解読方法がつづられている。あまりに食べた料理が膨大で、感心することしきりである。

このような書物を著す人がいるという事実に、頭が下がる思い。

【書評】パスタでたどるイタリア史(池上俊一)【91冊目】

概要

パスタの歴史!

まず、本を開くといきなり16頁ものフルカラー写真。パスタとともにあるイタリア人の生活が生き生きと捉えられている。

多くの日本人はパスタが大好きだ。

パスタの歴史をひもとくと、大航海時代以前と以後でかなり違う。

パスタの発明までは、まず小麦の栽培がメソポタミアで紀元前8000年前後に始まり、紀元前700年前後にはローマ帝国で前パスタ的なものが作られていた。しかし、それはまだパスタではなく、

  • ラザーニャのようなシート型
  • 細切りにして油で揚げる
  • 焼く
  • ハチミツや胡椒と和える

といった食べられ方をしていたのだ。

しかも、中世の王侯貴族らの主食は肉であり、油はラードであった。そのような食事以外は、女性的なものとしてさげすまれ、長い間パスタは日の目を見なかった。当然、パスタやオリーブオイルは女性的な食事だった。

パスタの復活は13世紀末である。しかし依然として、

  • ラザーニャ状
  • ブロードで煮る
  • 四角く切って煮る
  • 粉チーズをかけて食べる

といった現代とはかけ離れたものであった。マッケローニと総称され、「薬」「貴重品」として扱われており、製麺所が次第に増えていった。そしてついにヴェルミチェッリ、今日のスパゲッティの形状のものが誕生した。パスタは爆発的に流行し、1614年には規制されるほどであった。

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しかし驚くべきに、パスタは「手づかみ」でチーズや「砂糖」をかけて食べられていたのだ。

我々が知っているパスタは、トマトとニンニク、唐辛子が無ければ成り立たないから、驚きだ。トマトやその他の材料との出会いは、新大陸からそれらがもたらされるまで待たなければならないのだ。

その他のエピソード

上記のエピソードだけでは、本書の魅力の10分の1も伝えられていない。

例えば、誰もが働かずぐーたら暮らしていて、パスタが山の上から流れてくるのでそれを食べれば生きていけるという楽園「クッカーニャの国」の存在。

そして、パスタを禁じ、芸術的な肉の盛り付けに腐心したという「未来派」の人々。

我々が知らなかったような驚く歴史がこれでもかと語られるのだ。

 

【書評】料理人(ハリー・クレッシング)【80冊目】

概要

料理人が貴族の家を乗っ取る話。

作者のハリー・クレッシングは誰かの変名らしく、この本の作者がだれなのかはわかっていないという。

奇跡的な料理の能力、頭脳と腕力、美、魅力、人脈全てを備えた出自不明の主人公コンラッドがコックとして雇われてから、ヒル家の様子は次第に変わっていく。最初は朝食のパンがマフィンに変わった程度だった。しかし、次第に・・・。

この小説の主人公は飢えた黒鷲のようだと形容されるが、最後の最後の1ページでその正体を現す。これを読んだ人は、コンラッドは悪魔だと思わざるを得ないだろう。

【書評】SOY!大いなる豆の物語(瀬川 深)【53冊目】

概要

大豆をめぐる冒険小説。

筑波大学を出たが鬱病でわずか1年半でSE会社を辞めてしまった原陽一郎。仲間とともに同人ゲーム作りに精を出すさえない彼に、パラグアイの日系大富豪の遺産管財人の立場が舞い込む。彼はグローバル穀物メジャーSoyysoyaの長。しかしそのプレッシャーに陽一郎は耐え切れず、大富豪のルーツを追って果てしない探求の旅に出てしまい・・・

そして世界は大豆により終焉を迎える。

大豆は時空を超えて、岩手、満州、パラグアイを駆け巡る。

著者の凄まじい博識に感心するとともに、とても勉強になってしまう謎の小説だ。

【書評】カウンターの中から見えた「出世酒」の法則 仕事が出来る男は、なぜマティーニでなくダイキリを頼むか(古澤孝之)【43冊目】

概要

バーテンが書いた「酒活」推奨本。

偉いバーテンが書いた、貴重な本。

タイトルが上手い。釣られてしまうではないか!

早速ネタバレしたい。

「マティーニには個人のこだわりが反映される。相手のことより自分のこだわりを優先させる男は仕事が出来ない。
ダイキリはスタンダードなタイプしかない。自分を殺せる普通のタイプが組織では出世するのだ。」

本書の主張は以上である。

一理ある…かと思えば、今の世の中では「イノベーション」がブームで、逆に空気を読まず強いこだわりをもつ人間が尊重されている。ホテルのバーで接待をするようなところには、まだまだ古い世界もあるのだろうか。

なので、本書のテーマは話半分に流しておいて、後半のカクテルうんちくを楽しもう。かなりの種類のカクテルうんちくが語られていて、面白い。

【書評】牛肉資本主義 牛丼が食べられなくなる日(井上恭介)【37冊目】

概要

牛丼のこまめな値上げの裏にある、グローバルな変化を解説した本。

ジグレール教授の本にもある通り、穀物価格はファンドの先物取引の影響を受け、牛肉の価格はそれによって大幅に値上がりする。

しかし、最近の牛肉の値上がりには、実は中国が絡んでいるのだ。

中国の肉輸入量は、2014年時点で日本の2倍を突破。中国では伝統的に豚と羊と鶏が料理に使われる。しかし、今各地にステーキブームが起きており、どんどん牛食化が進んでいるのだ。

どんどん貧乏になる日本。どんどん豊かになる中国。単純に、高い価格を提示され、中国に日本が買い負けているという構図が生まれている。

ほんの40年前には全く考えられなかったことだが、お金がないために、牛肉が気軽に食べられなくなる日がやがて来ることはもはや確実なのだ。