【書評】カウンターの中から見えた「出世酒」の法則 仕事が出来る男は、なぜマティーニでなくダイキリを頼むか(古澤孝之)【43冊目】

概要

バーテンが書いた「酒活」推奨本。

偉いバーテンが書いた、貴重な本。

タイトルが上手い。釣られてしまうではないか!

早速ネタバレしたい。

「マティーニには個人のこだわりが反映される。相手のことより自分のこだわりを優先させる男は仕事が出来ない。
ダイキリはスタンダードなタイプしかない。自分を殺せる普通のタイプが組織では出世するのだ。」

本書の主張は以上である。

一理ある…かと思えば、今の世の中では「イノベーション」がブームで、逆に空気を読まず強いこだわりをもつ人間が尊重されている。ホテルのバーで接待をするようなところには、まだまだ古い世界もあるのだろうか。

なので、本書のテーマは話半分に流しておいて、後半のカクテルうんちくを楽しもう。かなりの種類のカクテルうんちくが語られていて、面白い。

【書評】桐嶋、部活やめるってよ(朝井リョウ)【42冊目】

概要

スクールカーストを題材にした小説。

結構面白い。

だが、リアルにスクールカーストの世界を楽しみたいのに、無理やり明るくしたいのか、「それは起こりえないだろ」という偶然の繋がりや病気の設定が結構冷めさせてくれて、何とも言えない。

リアルさが徹底された「何者」が、やっぱり傑作だと思う。

【書評】アホでマヌケなアメリカ白人(マイケル・ムーア)【41冊目】

概要

元アメリカ大統領ブッシュをバカにする本。

わざわざこの本が出た15年後に買って、読んでしまったのは私ぐらいのものだろう。

マイケルムーアのアジる能力は、本物だと思った。

が、この手の陰謀論はほぼ当たらないのだなあと思ったのも事実。なんだか侘しい気持ちになった。

【書評】特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ(五百田達成・堀田秀吾)【40冊目】

概要

心を温めなおすためのハウツー本。

タイトルにつられて、つい買ってしまった本だが、タイトルでほぼ落ちがついている。

中身は48個のハウツーから成り立っている。一見いいことを言っているような気もするが、どれも話に一貫性・論理性が薄く、結局読み終わると「?」となる。

要は、年を取ったり、傷つく経験をしていくと、心が冷めて、他人に関心が持てなくなってしまい、世界がどんどん狭くなっていき、悪循環になってしまう。

なので、いろいろ心理学のテクニックを使って、心を温めなおしましょう、という本である。

ぶっちゃけ48個は多い。

より読み込むためには

おそらく、次の2点に集中して読むのがいいのだろう。

  • 太字の部分
  • 著者が、実際にした行動
    • 合コンに年100回行ったとか

すると、例の有効性や論理性の欠落に気を取られなくなるし、著者の行動に基づいている、本当に信頼できそうな部分だけ読むことができる。おまけに、この方法なら一瞬で読み終わることができるのだ。

【書評】最高のリーダーは何もしない(藤沢久美)【39冊目】

概要

強いリーダーであることよりも、ヴィジョナリーリーダーになれ。

「最高のリーダー」とは何か

時代の変化は速くなっている。組織はその変化に素早く反応しなければならない。従来の強権的リーダーシップに指示待ちメンバーが従う構図は、反応が遅すぎる。

最高のリーダーは、自律的で素早い組織を作れる人のことである。

「何もしない」とは何か

メンバーが自主的に動き、リーダーは後から殿(しんがり)のようについていく。リーダーは何もしていないように見えて、ビジョンを考え、ビジョンを伝えるコミュニケーションを実践している。

「内向的」とは何か

ビジョンを考え抜くには、あらゆる可能性を考える「考え抜く内向的人間」でなければならない。

【書評】何者(朝井リョウ)【38冊目】

概要

就活とSNSを題材にしつつ、人間の醜い心理を読者に突きつける小説。

賛否両論

最後にどんでん返しがある。このどんでん返しの真の恐怖は、SNSにどっぷり浸った世代でないとわからないだろうと思う。Amazonのレビューでも、人によって評価が異なるようだが、この最後の仕掛けが聞く世代かどうかが大きいように思える。

また、SNS世代であっても、「読後感が最悪」という意見もある。

個人的には、絶対に読んだほうがいい小説だと言える。

演劇

また、登場人物のうち3人が演劇部や劇団というものに深くかかわっている。

若者世代だと、演劇部の知り合いの講演に誘われたり、俳優を目指している知り合いがいたり、朝から晩まで稽古している劇団員の知り合いがいたりすることが多い。登場人物が、どこかで会った人物に重なって見えてくる。この演劇という、自意識の発露の場が、この小説の主題と完璧にマッチしているのだ。

それもあって、若者ほどこの小説には衝撃を受けるはずだ。

【書評】牛肉資本主義 牛丼が食べられなくなる日(井上恭介)【37冊目】

概要

牛丼のこまめな値上げの裏にある、グローバルな変化を解説した本。

ジグレール教授の本にもある通り、穀物価格はファンドの先物取引の影響を受け、牛肉の価格はそれによって大幅に値上がりする。

しかし、最近の牛肉の値上がりには、実は中国が絡んでいるのだ。

中国の肉輸入量は、2014年時点で日本の2倍を突破。中国では伝統的に豚と羊と鶏が料理に使われる。しかし、今各地にステーキブームが起きており、どんどん牛食化が進んでいるのだ。

どんどん貧乏になる日本。どんどん豊かになる中国。単純に、高い価格を提示され、中国に日本が買い負けているという構図が生まれている。

ほんの40年前には全く考えられなかったことだが、お金がないために、牛肉が気軽に食べられなくなる日がやがて来ることはもはや確実なのだ。

【書評】最貧困女子(鈴木大介)【36冊目】

概要

日本最貧困のセックスワーカーたちにインタビューした本。

作者の問題意識は、最貧困女子がいわれのない誤解と迫害を受けていることである。世論からも、福祉からも、警察からも、買春男からも、同業者からも、彼女たちは迫害されている。

彼女たちは、親に捨てられ、性的暴力を加えられ、知的障害を抱えている。子供を抱えていて身動きもとれないが、誰も助けてくれない絶対的な孤独の中にいる。

著者は闇金融の社員などから彼女たちにアプローチしていき、「可視化」をすることに成功した。

著者は「どうしていいのかわからない」ということを認めているが、確かにどうすることもできない。このまま、何十年という時間が経っていくのか。いや、この本が注目されることに成功したからには、何かが変わる一歩が踏み出されたはずだと思う。

【書評】不思議な少年(マーク・トウェイン)【35冊目】

概要

1590年のオーストリア。ある日忽然と現れた美少年が、次々と奇跡を起こす。

少年の名はサタン―

マーク・トウェインの「人間とは何か」と同様、人間不信と人間への軽蔑に満ちた本。こっちは相手が心を読めるからさらにたちが悪い。そして時代は、魔女狩りの真っ最中。

サタンは何度も、人間は動物以下だとういうことを強調する。哀しく愚かな村人たちの行為が、読者をサタンに同調させる。

いわゆる「悪魔もの」の古典である。

【書評】物欲なき世界(菅付雅信)【34冊目】

概要

世界中で、消費文明が終わりを向かえている。物欲が無くなった世界では、何が求められるのだろうか。

これまで、消費の代表であるファッションは、服に集中していた。しかし、もう服は求められず、食品や雑貨が購買されるようになった。人々は、食品や雑貨に込められたストーリー、それらがもたらすライフスタイルの変化を期待して消費するようになったのだ。

「ライフスタイル専門誌」まで創刊され、代官山のツタヤでは売上一位を記録。人々はローカルな人間関係に回帰し、米国でも中国でも「ダウンシフト」、つまり、低消費化に向かう価値観への転換が進んでいる。

その行きつく先は、「働かずしてモノが手に入り」「ごく一握りの少数者以外は全員失業している国家」であるという。少数の労働者の上には富裕層である資本家が君臨する。富は集中する。ウォルマートを経営するウォルトン一家の総資産は15兆4000億円を超えた。その先にあるのは殆どの者にとっての、「貧しく豊かな世界」である。