【書評】料理人(ハリー・クレッシング)【80冊目】

概要

料理人が貴族の家を乗っ取る話。

作者のハリー・クレッシングは誰かの変名らしく、この本の作者がだれなのかはわかっていないという。

奇跡的な料理の能力、頭脳と腕力、美、魅力、人脈全てを備えた出自不明の主人公コンラッドがコックとして雇われてから、ヒル家の様子は次第に変わっていく。最初は朝食のパンがマフィンに変わった程度だった。しかし、次第に・・・。

この小説の主人公は飢えた黒鷲のようだと形容されるが、最後の最後の1ページでその正体を現す。これを読んだ人は、コンラッドは悪魔だと思わざるを得ないだろう。

【書評】どこにもない国(アメリカ作家)【18冊目】

概要

幻想小説のアンソロジーなのだが・・・

この本に収められている作品は本当に奇怪である。どこで起きたのか?いつ起きたのか?なぜ起きたのか?なぜそんなことを思いついたのか?全くわからない話ばかりだ。しかも単純に面白い。

個人的に、小説や映画といったものは、そのストーリーが全く聞いたことがないものであるという評判がなければ観ないようにしている。

またこのパターンか、と思って失望するから。

同じような価値観の人には、これは鉄板だと是非推薦したい。

【書評】ある出稼石工の回想(マルタン・ナド)【2冊目】

ここに、誰も知らない本がある。「ある出稼石工の回想」だ。

この本は、現代日本に生きる我々に何の関係も無いとも言える。だが、虐げられた労働者が、どう運命を、世界を変えて行ったかという、普遍的なストーリーが書かれた本だ。

石工でありながら高度な教育を受け、危険な仕事をよる9時までこなした後、11時まで文盲の労働者のために学校を開く。仕事は真面目で、才気に溢れ、人の何倍も稼ぎ、父親の莫大な借金を繰り上げ返済してしまう。

非常に優れて魅力的な人間でありながら、出稼ぎの身の上から、妻には1年に1度しか逢えないナド。

彼は政治家になり、知事に上り詰め、世界を変えようとするが・・・

人間臭く、限りなくリアリティに溢れていながら、力強く運命を開く冒険譚だ。このまま埋もれてしまうには、あまりに面白い。