【書評】カモメになったペンギン(ジョン・P・コッター)【47冊目】

概要

組織変革の方法を解説したペンギンの寓話。

ビジョンを組織文化として定着させるにはどうするかという方法論。

  1. 問題発見
  2. ビジョンを打ち出す
  3. ビジョンを浸透させる
  4. 障害を取り除く
  5. 文化として定着させる

一番面白いのは、ビジョンを浸透させるためには、イケメンに語らせるというところ。本書に出てくるイケメンペンギンは、イケメンでありながらお茶目で主婦に人気があるというタイプである。

ブレーンとイケメン役は分かれているのが現実である。この本がユニークなのは、この現実を認めて、組織改革を「チーム」でやらなければならないとしていること。5種類の役割がある。チームは5人なのだ。

  • 独創的発案者(変人・フリーク)
  • ブレーン
  • イケメン
  • 行動派
  • すべてをまとめる真のリーダー

【書評】成長する人が実践する30のルール(大久保幸夫)【46冊目】

概要

成長する人が実践する30のルール

Amazonのレビューでは、「薄く広い」と書いてある。なるほど、確かにそうだ。

でも最初の話は面白い。仕事への習熟プロセスは、「最初は急流のいかだ下り、後半は山登り」だという例え話だ。

いかだ下り=何でもやらされて、それに全力で取り組み、スキルを増やしていくこと。10~15年。

山登り=目標を定め、じっくりと戦術を練って取り組むこと。

人生で、山はいくつも選べない。そこで、いかだ下りで見てきたいろいろな風景が役に立つと語られている。

味がある、いいたとえ話ではないか。

ほかにも、以下の章は面白い。

§1  筏下りを経て山登りに至る

§11 不安は成長の母

§13 人脈はセーフティーネット

§18 リーダーシップ=P+M理論

§23 イノベーターの7つの行動のくせ

§29 生涯2転職4学習

こんなところです。

【書評】ほとんどの社員が17時に帰る売り上げ10年連続右肩上がりの会社(岩崎裕美子)【45冊目】

概要

ある化粧品ベンチャーが、17時帰宅を徹底させた話。

時間軸は以下の通り。

  1. 広告代理店勤務
  2. 先輩の起業についていき社員1号として入社、取締役となるが、ブラック起業化し自らも退職。
  3. 化粧品会社を起業
  4. 17時帰宅を徹底させることに成功。数値目標も撤廃。
  5. 社員が暇でやりがいをなくし、士気が底に。
  6. 社訓を「挑戦」にし、評価制度を工夫し、社員のやりがいを取り戻した。

成功をアピールしたタイトルと裏腹に失敗の連続で、泥臭く、ともすれば筆者がかっこ悪く見えるくらいオープンに書いてある。しかし、ここまでさらけ出せるのはすごい人だと思う。

実際に失敗はものすごくあったのだろうし、良い環境を用意したからと言って、必ずしも経営陣と社員が一丸となってはいなかったようだ。人の心は難しい。でも、化粧品が良く売れ、会社は拡大した。

【書評】ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング(赤羽雄二)【44冊目】

概要

メモの活用による思考整理法。

ゼロ秒思考とは、前もって徹底的に考えておくことで、瞬時に判断を下せるようになること。前もって考えておく段階で、メモを活用する。

人間は考えてるようで、効果的に考えられていない。とくに、もやもやを抱えたまま、言語化できず、同じような思考を堂々巡りしている場合が多い。いや、もやもやが言語化出来てすっきり出来るということにすら、気づいていない場合も多い。

著者は、以下のことを勧めている。

  1. A4の紙にとにかく思いつくままメモを書く。
    • テーマを設定し、タイトルを書き、下線を引く。
    • 本文を、思いつくまま、4~6行書く。
  2. 見返さないで、100枚くらい貯める。
    • 同じようなテーマで何度かいても良い。毎回結果は変わり、次第に固まってくる。
    • 可能ならフォルダわけだけはしておく。
  3. 振り返り期間に以下を行う。
    • メモの取捨選択。
    • メモのカテゴリわけ。
    • メモ同士の構造化。並び替える。

本手法のメリットは、以下の通り。

  1. 堂々巡りしていることに気付ける。
  2. もやもやを言語化するきっかけになる。
  3. やりやすいので、企画書など、大型の書き物のとっかかりになる。

特に、企画書などをコンピューターで書く場合には、取捨選択と並び替えが絶望的に非効率的であるが、メモならば捨てればいいし、並び替えればいい。だから、ノートではだめで、紙が切り離されていることが本質的なのだ。

斬新だと思った。人によっては当然のことが書いてあるだけだと言うと思うが、人間の思考プロセスをここまで細かく根本的に考え、しかも実行しやすい合理的な方法に落とし込んでいるのはすごいじゃないか。

【書評】カウンターの中から見えた「出世酒」の法則 仕事が出来る男は、なぜマティーニでなくダイキリを頼むか(古澤孝之)【43冊目】

概要

バーテンが書いた「酒活」推奨本。

偉いバーテンが書いた、貴重な本。

タイトルが上手い。釣られてしまうではないか!

早速ネタバレしたい。

「マティーニには個人のこだわりが反映される。相手のことより自分のこだわりを優先させる男は仕事が出来ない。
ダイキリはスタンダードなタイプしかない。自分を殺せる普通のタイプが組織では出世するのだ。」

本書の主張は以上である。

一理ある…かと思えば、今の世の中では「イノベーション」がブームで、逆に空気を読まず強いこだわりをもつ人間が尊重されている。ホテルのバーで接待をするようなところには、まだまだ古い世界もあるのだろうか。

なので、本書のテーマは話半分に流しておいて、後半のカクテルうんちくを楽しもう。かなりの種類のカクテルうんちくが語られていて、面白い。

【書評】桐嶋、部活やめるってよ(朝井リョウ)【42冊目】

概要

スクールカーストを題材にした小説。

結構面白い。

だが、リアルにスクールカーストの世界を楽しみたいのに、無理やり明るくしたいのか、「それは起こりえないだろ」という偶然の繋がりや病気の設定が結構冷めさせてくれて、何とも言えない。

リアルさが徹底された「何者」が、やっぱり傑作だと思う。

【書評】アホでマヌケなアメリカ白人(マイケル・ムーア)【41冊目】

概要

元アメリカ大統領ブッシュをバカにする本。

わざわざこの本が出た15年後に買って、読んでしまったのは私ぐらいのものだろう。

マイケルムーアのアジる能力は、本物だと思った。

が、この手の陰謀論はほぼ当たらないのだなあと思ったのも事実。なんだか侘しい気持ちになった。

【書評】特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ(五百田達成・堀田秀吾)【40冊目】

概要

心を温めなおすためのハウツー本。

タイトルにつられて、つい買ってしまった本だが、タイトルでほぼ落ちがついている。

中身は48個のハウツーから成り立っている。一見いいことを言っているような気もするが、どれも話に一貫性・論理性が薄く、結局読み終わると「?」となる。

要は、年を取ったり、傷つく経験をしていくと、心が冷めて、他人に関心が持てなくなってしまい、世界がどんどん狭くなっていき、悪循環になってしまう。

なので、いろいろ心理学のテクニックを使って、心を温めなおしましょう、という本である。

ぶっちゃけ48個は多い。

より読み込むためには

おそらく、次の2点に集中して読むのがいいのだろう。

  • 太字の部分
  • 著者が、実際にした行動
    • 合コンに年100回行ったとか

すると、例の有効性や論理性の欠落に気を取られなくなるし、著者の行動に基づいている、本当に信頼できそうな部分だけ読むことができる。おまけに、この方法なら一瞬で読み終わることができるのだ。

【書評】最高のリーダーは何もしない(藤沢久美)【39冊目】

概要

強いリーダーであることよりも、ヴィジョナリーリーダーになれ。

「最高のリーダー」とは何か

時代の変化は速くなっている。組織はその変化に素早く反応しなければならない。従来の強権的リーダーシップに指示待ちメンバーが従う構図は、反応が遅すぎる。

最高のリーダーは、自律的で素早い組織を作れる人のことである。

「何もしない」とは何か

メンバーが自主的に動き、リーダーは後から殿(しんがり)のようについていく。リーダーは何もしていないように見えて、ビジョンを考え、ビジョンを伝えるコミュニケーションを実践している。

「内向的」とは何か

ビジョンを考え抜くには、あらゆる可能性を考える「考え抜く内向的人間」でなければならない。

【書評】何者(朝井リョウ)【38冊目】

概要

就活とSNSを題材にしつつ、人間の醜い心理を読者に突きつける小説。

賛否両論

最後にどんでん返しがある。このどんでん返しの真の恐怖は、SNSにどっぷり浸った世代でないとわからないだろうと思う。Amazonのレビューでも、人によって評価が異なるようだが、この最後の仕掛けが聞く世代かどうかが大きいように思える。

また、SNS世代であっても、「読後感が最悪」という意見もある。

個人的には、絶対に読んだほうがいい小説だと言える。

演劇

また、登場人物のうち3人が演劇部や劇団というものに深くかかわっている。

若者世代だと、演劇部の知り合いの講演に誘われたり、俳優を目指している知り合いがいたり、朝から晩まで稽古している劇団員の知り合いがいたりすることが多い。登場人物が、どこかで会った人物に重なって見えてくる。この演劇という、自意識の発露の場が、この小説の主題と完璧にマッチしているのだ。

それもあって、若者ほどこの小説には衝撃を受けるはずだ。